ガキの頃、夏休みに田舎の伯父さんちに泊めてもらいに行ったときのこと。
そこは床屋さんで、真っ白な可愛らしい手乗り文鳥がいた。
ちっこくて、人なつこい小鳥にいっぺんで虜になってしまった。
ねだる甥っ子。
優しい伯父さんは、連れて帰って飼うのを許してくれた。
当時、夢中で見てた番組の名をつけた。
小首をかしげて、ぴぴぴと節をつけて鳴く。
小さなまんまるい瞳。
ピンク色のまぶたをぱちくりさせてたっけ。
ボクが高校にあがっても、彼は生きていた。
ヒステリー気味に鳴くことはあっても、さすがに老いて元気はなくなった。
それがどんなことなのかを想像する力を、まだ若かった自分は備えてなかった。
もう、毎日、朝晩世話をやいてやることも、遊んでやることもなくなっていた。
そしてある日の午後、ふと気配がないことに気づいた。
籠の下に小さくなっていた。
ひょっとしたら死んだのは、今日のことではなかったのかもしれない。
手のひらの上の彼は、ちいさくとても軽かった。
兄が弔辞のような詩を書いてくれ、それにくるんで庭に埋めてやった。
私は涙をだして泣いたのを思い出した。
0コメント